終末のフール 伊坂幸太郎

 読了。
 今まで文庫化された伊坂作品の中で、たぶん一番面白くないんじゃないだろうか。
 小惑星激突まであと三年という世界を描いたお話なんだけど、中身はパニックでもなんでもない。要は混乱と混乱の間における平和――小康状態に生きる人々に焦点を当てている。
 設定は面白い。でも、性格がどこか斜に構えている伊坂の登場人物では、人々の繊細な心の動きを表現するお話に合わなかったようだ。読み終えて振り返ってみたものの、印象に残った場面が少なかったように思える。


 どういう意図でこの作品を世に送り出したのかはわからないけれど、前回に文庫化された「魔王」に引き続き、作者にとっては新しいアプローチなんだろう。今回はあんまり面白くなかったけれど、ジャンルのふり幅は大きければ大きいほど良いと思う。
 10年先もベストセラーを生み出し続ける存在であって欲しい。一時の流行で消える作家じゃないはずだ、と個人的には思ったりしてる。

終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)