楽園 宮部みゆき

 二週間近く読むのに掛かってしまったが読了。
 新刊を読むたびにだけど、「宮部みゆきは丁寧だよなぁ〜」と毎回感心させられる。描写・心情・ストーリー展開。どれをとっても丁寧にそしてしっかりと紡がれている。
 さて本作「楽園」は一応「模倣犯」の続編である。密林ではどうも評価がイマイチだけど、それはやっぱり模倣犯の続編だと思って読んでるからに他ならない。ただ、楽園を描くために前畑滋子という模倣犯の登場人物を出さなければならなかっただけなのだろう。だから模倣犯の流れを期待するとまあ面白くない。流れ的には「誰か」と「名もなき毒」である。驚くためにではなく安らぐため、つまり傷を治す意味合いの作品なのだと思う。
 この作品で面白いのは、事件の動きではなく登場人物たちが抱える問題の方だと感じた。派手さを求めるなら他のミステリー作家に任せれば良いと思う。
 ただ昔からのファンとしてみればやはり残念な気持ちもわかる。確かに上巻を読み進めるのは少し大変だった。最近の宮部作品の弱点ともいえる「スロースターター」な部分が、楽園にもあった。インパクトがないのもまあ不満と言えば不満になるかもしれない。
 それでも「名もなき毒」よりは遥に面白いと個人的には思う(あれは主人公が気に食わないからなぁ……)。世間が求める宮部作品のハードルはかなり高い。なんにしてもその所為で楽しめない方々はキツイだろうな。


楽園 上

楽園 上

楽園 下

楽園 下